院内環境のセラチア棲息状況 平成14年4月26日 院内感染対策委員会勉強会
 セラチア菌は、自然界の土や水の中、および動物や人の腸の中など、いろいろな場所に 存在する。それには病院施設(特に、湿気の多い場所)も含まれる。病院内では、医療従 事者の手、人工呼吸器の管、洗面所、静脈注射薬、血小板などの血液製剤などに、定着し てしまうことが知られている。各種動物からセラチア菌は検出されているが、健康なヒト が保菌していることはまれである。  また、本来は病原性が弱くいわゆる弱毒菌・日和見菌に属する腸内細菌であるが、近年 の医療技術の進歩や易感染患者の増加に伴い、多くの症例で医療器具の使用機会が増加し ていること、更に多剤耐性菌を獲得したものが出現したことが院内感染の予防対象となっ ている。感染経路は接触感染が多く、手洗いの励行が求められる。  当院の院内環境でセラチアを含め細菌が生息していそうな場所、又は居ては困る場所 37箇所を選び調査対象とした。 検体採取法は「ふき取り法」で行った。  初代培養は BTB乳糖加寒天培地を用い通常の細菌検査手順で行った。  調査対象37個所は、9個所(洗面台、おしぼり、清拭車の中、NS内流し、風呂場、病室 ノブ、病室洗面台、洗濯機、固形石鹸)に大別される。 37箇所のうち13箇所(清拭車の蓋・清拭車の中・ドアノブ・病室洗面台・洗濯機の底・ バスタブ・乾燥固形石鹸7)は陰性であったが、24箇所(共同洗面所・清拭車に入れる前 のおしぼり・NS流し4・風呂場3・洗濯機内・デイルーム3・特浴・固形石鹸10)から 14種類(延べ49菌種)が検出された。  セラチアは予想通り湿気の多い環境に棲息しており、「流しのスポンジ入れ」「共同洗面台」 「固形石鹸」等5箇所から検出された。これらのセラチアは薬剤耐性検査の結果、感受性菌 であった。  他の菌はAcinetobacter属13例・Klebsiella属7例・Enterobacter属5例・ Chromobacterium属4例・Citrobacter属3例・Xanthomomas属3例・ Pseudomonasu属2例・かび2例・他のSerratia属・E.coli・Yersinia属・ CNS各1例であった。  セラチアは院内環境の湿気の多い所に棲息しており、湿気対策と環境に触れた時の手洗 いの重要性を再確認した。また、洗面台の固形石鹸の撤去、清拭車の加温中(使用不可) 保温中(使用可)の明記が必要と思われた。